PC-FX再入門!
令和の今、手に入れました…孤高のフルアニメーションゲームマシン、PC-FX。魔が差した?何かのネタ?いやいや、本気で欲しくて。昨今のレトロゲーム高騰から安くはない価格ながら、良さ気な機体を狙い躊躇なくゲット。PC-FXは現役当時ユーザーで、思い入れの強いタイトルも多く「またプレイしたいな」と興味再燃、それで出戻り。縁有って再びPC-FXユーザーとなったこの機会は気持ちも新たに。かつてに思いを馳せつつ、おさらいも兼ねてPC-FXの歴史を辿ってみたいと思います。
TETSUJINに始まるPC-FX
PC-FXは94年12月23日に発売されました。筆者の記憶では開発公表が93年末、正式名称がPC-FXに決定&仕様公開が94年春だったかなと。しかし実は92年のある頃に、後のPC-FXとなる原形が姿を見せる機会が有りまして。92年のCESで、ハドソンは自社開発の32bitチップセット「TETSUJIN」をデモンストレーション。このテツジンを基幹プロセッサとして搭載したコンソールが、後のPC-FXです。
開発コードFX
93年末、セガとソニーが次世代ゲーム機の開発を明かす中で、NEC-HEも次世代ゲーム機「開発コードFX」を公開。この段階では詳細不明のFXでしたが、ハドソンのテツジンチップセットの件から「FXはテツジンチップセットを載せるのかな?」と想像したり。94年春前にFXの続報で、ゲームイメージ画像とメモリー容量が発表されたと記憶。
驚きしかないPC-FX!
94年春、正式名称がPC-FXに決定し詳細仕様が発表。この段階で「FXはダメだな」と確信したのを今でも覚えています。いきなり身も蓋もないですが、新世代機が3Dを軸にした技術仕様を掲げるご時世で、PC-FXは旧世代丸出しの「スプライト最大128個」「波形メモリー音源6音」…まるで旧来のスーパーファミコンを相手にした技術、スペックに場違い感がプンプン。いや、旧来機と比べても厳しい中身。次世代機として発表されながら時代遅れな仕様が躍る違和感は、戦闘機が飛び交う戦場に、鉄の槍を持って参戦するイメージ…どうしてこうなった!?
そんなPC-FXで唯一「これなら…」と思えたのが、動画をリアルタイム制御出来る動画再生機能。PC-FX最大の特徴で唯一、他機種に勝るアドバンテージ。とは言え、この動画機能をどう使えと?どちらにせよ、登場前から主戦場での負け戦は見えてました。
逃げるが勝ちとは言うけれど…
年末商戦を狙うセガサターンやプレイステーションと同時期の12月23日に、PC-FXも発売されました。貧弱な基本性能に強力な動画機能を乗せた歪なハードウェア、パンチに欠けるローンチタイトル、暗雲立ちこめる将来展望…悪い意味でライバル機とは対抗しない、対抗不能なのは一目瞭然。PC-FXが勝てるのは、使い所が難しい動画再生機能のみ。あとは無駄にデカイ本体サイズと、醸し出す強烈な負けハード感…いや、ふざけてる訳じゃなくマジで。当時多くの人が、PC-FXに次世代ゲーム機戦争の試合棄権状態を感じたのではないでしょうか?
ここまでダメ出ししたので、もう全部書いときます。汚れが目立つホワイトカラー、無駄に拡張スロットを設けたビッグな本体サイズ、大きさへの憧れはソフトのケースまで巨大化させ、先代のPCエンジンで評価された利点を見事に潰す改悪の数々。スマートとは言えない外部メモリーパック、PCエンジンのチップを多数使い貧相な性能ながら後方互換無しの残念設計。せめてPCエンジンとの互換だけでも実現していれば…。
4年間で62タイトル、販売11万台のPC-FX
書きたい放題書いたPC-FXは皆様ご承知の通り、令和の今でも「失敗ゲーム機のエリート的存在」として名を轟かしております。94年の登場から98年4月まで全62タイトルを発売、本体の最終販売台数は約11万台で幕を閉じたPC-FX。これは失敗ではなく大失敗、惨敗じゃなく大惨敗。ゲーム機史上のワーストを深く刻んだと言えます。
厳しい中よく頑張った!感動した!
散々貶したPC-FXですが、しかししかし!発売前から負け戦、普及を期待出来ないハードでありながら、その実4年もソフトが供給され市場を形成していたのは、逆に凄いと思いませんか?たった11万台の販売台数で62タイトルを揃えたのは、勝ち負け云々関係無く、相当に頑張ったなと。ハドソンが早々に離脱したのは残念ですが、それでもハドソンは憎めないし、何よりNEC-HEにはユーザーとして深く感謝、敬意を表したい。
負けが込んでも頑張り走り切ったPC-FXの4年間は、小さいが故の尖ったドラマを綴り、またPC-FXだからこそ生まれ輝く作品も存在しまして。ハードもソフトも刺さり所は盛り沢山。その辺を再びプレイしたく、令和の今PC-FXを買い戻した次第です。さぁ楽しもう、PC-FXを!