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MD 時の継承者 ファンタシースター3

シリーズの中でも毛色が異なるファンタシースター3。

新機軸で迫るシリーズ第三弾

 セガのRPG代表作ファンタシースターシリーズ。その元祖4部作、1990年にメガドライブで発売された『時の継承者〜ファンタシースター3』(以下PS3)をクリアしました。当時から賛否両論の評価を持つ本作ですが、実際にプレイしてみての作風、毛色の違いは良くも悪くも印象的。そんな本作を振り返り、綴ってみたいと思います。

オラキオの民とライアの民、それぞれの思いが世代を超えて交差する。

結婚と世代交代が紡ぐマルチシナリオ

 「時の継承者」というタイトルが示す通り、本作では父、子供、孫の三世代へ渡り物語が展開。さらに各世代で結婚相手の選択から子供、孫もそれぞれに分岐するマルチシナリオ・マルチエンディングとなっています。

RPGで「世代と結婚」と言えば92年発売のドラゴンクエストV。そのドラクエVに先駆けて「世代と結婚」を取り入れ、しかもマルチシナリオとして形成させた本作は90年の発売…セガの先進性は流石ですね。

オープニング。良い感じのビジュアル。

シリーズでも異色のファンタシースター3

 ファンタシースターシリーズは1〜2、4とプレイ&クリア済み。本作をクリアした事で元祖4部作を制覇しました。そうした中で見た本作は、シリーズ唯一の異色感満載。マルチシナリオを特徴とする本作は、独立した多数の世界を行き来する舞台構成、その冒険スタイルも独特。分野別に集約されパワー配分が肝となるテクニック(魔法)の扱い方も特殊と、手触りは相当違います。

中世ファンタジーを感じさせる町並み。

なぜ本作は前作から大きく作風を変えたのか?ここからは推測ですが、限られた容量、制作期間で正統進化作品を作る事が難しく、王道という土俵を避け、異なる切り口からゲームバリューを追求したのが本作なのかなと。旧スクウェアのRPGに準えると本作は玄人系のSaGa、PS1〜2、4が王道のFFみたいな。「FFのつもりでプレイしたらSaGaだった」と…そりゃ評価も割れますって。

物語はマーリナとの結婚式から始まる。しかし…。

毛色は違うが出来はナカナカ

 実際にプレイしてみた感想は、世間での言われ様が過小評価じゃないかと思える印象。一貫したボリューム、大作感は控え目ですが、各マルチシナリオを全体験となれば相当なプレイ時間となり、ガッツリ堪能できます。

戦闘は易しめのバランス、エンカウントも程良い位か僅かに高め程度。何よりシステム部分の快適性は上々で、セミオートのサクサクバトルが好印象です。ゲームシステム、骨組み部分の出来はしっかりしています。ダンジョンなど全体の難易度も程良い湯加減と遊び易い作りに。

戦闘シーン。背景の多重スクロールは奇麗な反面、敵のアニメーションは簡略化された。

本作に聴く真のゲームミュージック!

 独創性豊かな本作は、音楽の聴かせ方も魅力の一つです。フィールド(屋外マップ)曲は初めて聞くと物寂しい雰囲気。孤独な旅の途中で仲間が一人加わると、演奏パートも一つ増えてちょっと賑やかに。一人、また一人と仲間が増える毎に演奏が厚く奏でられ、総勢5人のフルメンバーが揃うアンサンブルは必聴です。また戦闘楽曲も、戦況の「劣勢」「拮抗」「優勢」で曲がターンごとに変化するのが面白くて。

多くのゲームでは音楽をBGMとして流していますが、本作では音楽を動的に聴かせる、ゲームの手触りを音楽で伝えるという、本当の意味でのゲームミュージックを実現しています。蛇足ながら、前作の耳に響く「刺さりドラム」は鳴りを潜め、FM音源らしいマイルドな音色を存分に堪能出来ます。コレ、結構大きいポイントでしょ?

中世ファンタジーの世界観とは異なる、SFライクなダンジョン。

システム部分は悪くも無いけど粗も有り

 思ってた以上に楽しめる本作、しかし気になる所もチョイチョイ有りまして。まずセーブファイルが2つしかないのは不満です。マルチシナリオを一回のプレイで済ませる、シナリオ分岐前セーブを防止するためにセーブファイル数を削減?次にメニュー画面のキャラクターウィンドウを流用した各インターフェースが見難かったり使い難かったり。

戦闘のビジュアルは背景の多重スクロールで疾走感を演出、しかし敵のアニメーションは大幅に簡略化…トータルでは前作比でマイナス査定。ビジュアル面は容量の問題も有ると思いますが、できればもう少し華やかさが有れば。

最初の結婚。相手選びで生まれる子供&シナリオが分岐する。

サクサク快適バトルはテクニック要らず!?

 戦闘がサクサク快適なのは優秀。とは言え終始物理攻撃で押し通し可能かつ、攻撃テクニックの必要性が無いのは戦術的面白みに欠けます。ゲーム中に使ったテクニックは回復系のみでした。テクニックを使う必要性が低く、売りであるテクニックのパワー配分システムが活かし切れていないのは勿体ない。

他にも状態変化の毒が単にHPを隠すだけのお粗末案件だったり、街から街への移動魔法が無いのも非常に面倒です。後半は飛行での移動も可能になるとは言え離陸&着地点が決まっており、移動魔法の無さを補える機能には至っていません。練り込みの「もう一頑張り」が欲しいところです。

敵のデザインも独特、色物系も多い。

物語の見せ方はサッパリとシンプル

 そして本作最大の特徴であるマルチシナリオの中身、物語の扱いに目を向けると、展開や演出は控え目で淡泊。例えばモブキャラを含めた登場人物は、フラグ立ての情報機能感が強く趣に欠けがち。ゲームの善し悪しをロジカル部分で捉える自分としては淡泊な展開も許容範囲、逆に「物語を濃密に楽しみたい」方には不満かなと。

後半では空を飛ぶ事も可能。しかし移動魔法が無いのは面倒。

大作と気張らず楽しみたい

 気になる部分は相応に有るも、それ以上に楽しめる作品なのは間違いありません。内容、難易度とも尖っていた前作に比べ、遊び易くマイルドになった本作。前作と同じ6Mbitの容量にマルチシナリオを盛り込み、様々な新システムで迫ったのは見事と言えます。そんなシリーズの異端児は、世間のシビアな目の前にどうしても隠れがち…ファンタシースターファンで本作を未体験ならプレイして損無し、充分楽しめます。シリーズのナンバリングタイトルでも本作は外伝ですから、少々変わったファンタシースターでも良いじゃあーりませんか。

本作はマルチエンディング。とあるエンディングのワンシーンから。

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