PC-FX専用のSF3Dアドベンチャー!
PC-FXローンチタイトルの一つが本作、ハドソンのチームイノセントです。美しいフルカラーCGの背景とモーション豊かなキャラクターのコラボレーションは、3D空間を自在に駆け、探索する「次世代の楽しさ」を実現。高品質なアニメーションとCG、素晴らしい音楽。そして紐解かれる、深く切ない物語はPC-FXでしか味わえません。私的には「本体を買ってでもプレイして欲しい」と言えるくらい好きな作品です。
チームイノセントを手本に作ったのがバイオハザード!?
本作の概要は、美女3人が活躍するSF3Dアドベンチャー、端的に言えばバイオハザードと同形のゲームとなります。しかししかし!本作の名誉の為に言っておくとバイオハザードは96年3月発売、本作は前項でも触れた通りPC-FXと同時発売の94年12月23日…そうなんです、本作の方が先に出ており、正確には「チームイノセントを手本にしたゲームがバイオハザード」になります。もっとも、パソコンの洋物アドベンチャー『アローン・イン・ザ・ダーク』に習ったのが本作な訳ですが。とにかく、あのバイオの先駆け的存在が本作と考えて頂ければ。
PC-FXの機能をフル活用したグラフィック
上質なアニメーションとCGが融合するオープニングムービーは、当時では相当気合いが入っており、今見てもナカナカ。素晴らしい映像をガッツリ魅せるPC-FXの動画再生機能に今さらながら敬礼!ゲーム中でも随所に音声、CGの演出が入り、スペクタクルシーンではアニメーションが物語を盛り上げます。CD-ROMのアクセスを感じさせずスピーディーに演出を入れる事が出来るのもPC-FXならでは。ゲーム中に流れを止めないのは、実に快適で気持ちが良いです。
ゲームを構成する背景グラフィックは、全てフルカラーフルスクリーンの3DCG。キャラクターがスプライトで描かれており、美しい背景と粗いキャラの重ね合わせに違和感を感じるも、PC-FXというハードで表現される手段として充分に魅力、価値を感じられます。PC-FXファンの「あばたもえくぼ」って事でOK。
安く懐かしい音色が美味しい
上質なグラフィック関係は先の通りですが、オープニングやエンディングの主題歌からゲーム中の楽曲まで、メロディアスで聴かせる音楽の良さも本作の魅力。要所で流れるCD-DAサウンドの他に、ゲーム中の音楽、効果音の多くは内蔵音源を駆使して鳴らしています。波形メモリ6音という貧弱なPC-FXのサウンド機能、その安っぽく軽い音色が、実は本作の雰囲気に合っており、強ち「ネガティブ」でもなく。サンプリングした楽器の音が当然の昨今、画一的な音色が溢れる中で、軽くチープな波形メモリサウンドは逆に新鮮味を増し、大きな魅力になっているとさえ思えます。言い過ぎ?
アクションも謎解きも…色々楽しめるゲーム展開
ゲームは全3章のシナリオで構成され、それぞれのシナリオで規定のミッション、スコアを達成する事でクリア。3つ全てのシナリオをクリアしてエンディングとなり、シナリオ1つのプレイ時間はおよそ2〜3時間。美しい3DCGで描かれた各ステージ、衛生や宇宙船内を探索するのはドキドキワクワク、情報を集めて謎を解いたり、時には敵との戦いを繰り広げ。カウントダウンでの時限イベントも発生し、ゲームとしての魅力はバッチリです。
彼女達の明るさに救われる物語
アドベンチャーゲームと言えば物語が肝。美女3人が主人公の本作は、女の子らしい軽口とチャーミングなノリが小気味良く、台詞や掛け合いにクスッと笑う事もしばしば。とてもライトな雰囲気ですが、明るさの裏に秘められた深く大きな闇、彼女らの生き様が物語の核で。人とは?命とは?明らかになる過去、切なく、やるせない思いを胸に問われる未来…心に残る、何が正解かを考えさせられる物語は実に印象深く。
作りの甘さ、続編が無いのは悔やまれる
当時としては非常に斬新、魅力溢れる本作ですが、調整の甘さ、表現方法の問題から操作感は癖が強く、慣れるまで若干時間が掛かります。敵との戦いは相応に有りますが、当たり判定、向きや距離感が掴み辛く理不尽に感じる事も。戦闘関係はもう少し作り込んで、面白い形にして欲しかったなと。様々なアイテムが登場する反面、用途が解らない物も多く、その辺の説明不足も気になりました。続編が出ていれば洗練、解決されていただろうと…実に惜しい。
翔び立とう未来まで…
マイナーハードPC-FX用の本作は現在に至るまで、移植もリメイクも無し。縁あってPC-FXユーザーとなったなら最優先で揃えておきたい、是非プレイして欲しい一作なのは間違いありません。レトロゲームブームの流れから本作の中古相場も上昇しつつあり、プレイするなら今です、いま。翔び立とう、未来まで…We are the innocent!