RPG専業メーカーのレイ・フォース
PCエンジンでRPG開発に専念していたソフトハウスがレイ・フォース。同社のゲームは「捻らず、尖らず、定番の心地良さこそ不変の魅力」という理念に制作され、懐かしささえ漂うゲームスタイルには親しみと安心感がありました。誰もが気張らず楽しめる王道RPGをPC-FXで…それが本作『ミラークルム ザ・ラストレベレーション』です。
親しみと安心の王道型RPG
本作は剣と魔法、機械が織り成すスチームパンク・ファンタジー。集う仲間と共に幾多の世界を駆け、神と悪魔の戦いへ…スケールも物語も広く大きく、大作RPGの様相に当時から期待を寄せてました。ゲームシステムは2D見下ろし型マップにコマンドバトルと、やはり王道中の王道。主人公と仲間キャラの掛け合いも含め、全てド直球!微塵もブレないストレートで攻めるスタイルは、逆に潔ささえ感じます。
小粋な仕掛けがアクセントに!
RPGではお馴染のコマンドバトルですが、本作では目押しで効力が変化するインパクトモードを搭載、天候変化で状況が変化したりと、小粋な仕掛けも有りまして。また、ゲームの本筋とは絡まずとも探索意欲が刺激される物々交換など、王道に水を差さないアクセント、定番を「ありきたり」にさせない心意気が好印象。クリア後に挑戦出来る超難関ダンジョンも、サービス精神満載で嬉しいポイント。
素晴らしき楽曲多数でもサントラは未発売
王道、定番のRPGがレイ・フォースの特徴ながら、もう一つ「素晴らしい音楽」も同社作品の特徴。本作でもやっぱり素晴らしい楽曲を多数聴かせてくれます。ゲーム中の音楽はほぼ全て生演奏。内蔵音源の波形メモリーサウンドも個人的には好きですけど、ここはやっぱり生演奏で!タイトルのメインテーマ、戦闘やボスバトル、ラスボス戦、メギド飛行、エンディング…良い曲多過ぎ。本作の楽曲はPCやスマホ、さらにはカセットテープでマイベストを録音して日常的に聴いているほど。
PC-FXのグラフィック機能を駆使!
32bitマシンのPC-FXですが、基本描画性能は先代のPCエンジンに毛が生えた程度の旧世代機レベル。ハード、ソフトウエア展開の両面から、描画機能をしっかりと活用したゲームが少ない中で、本作のグラフィックは実に興味深く、技術的にも見所が多く侮れません。遠景を望む二重スクロール、半透明とラスター処理で表現される濃霧、メギド飛行時の回転拡大縮小による3Dビュー。戦闘時の天使召還、イベントアニメーションは動画再生で。PC-FXの描画機能をフル活用して表現される本作のグラフィックは、ゲームの魅力を一層引き立てています。
ストレスフリーの快適なゲーム進行
マップ移動、テキスト表示、バトル展開、画面切り換えなど、速度面でのストレスは一切無く非常にスピーディー。CD-ROMのアクセスも高速で読み込みも気にならない頻度。各操作系、インターフェースもしっかり作られており、非常に快適なゲーム環境を実現。
ミラークルム、令和のクリア達成
筆者が令和の今にPC-FXへ回帰した理由の一つが、本作を再び楽しみたいとの思いから。早々にソフトを入手し、生涯2度目の本作をプレイ。物々交換は参加せず、長期戦必須のラスボスに手を焼きつつ約30時間超でクリア。あとはクリア後のバベルの塔だけ。そしてこのバベルの塔が超難解でして。
普遍的魅力の古典的RPG
レイ・フォースのゲームは当時から非常に保守的で、悪く言えば古くさいゲーム。昨今では絶滅危惧種となった王道的作風、2Dマップ&コマンドバトルの古いRPGを今さらプレイ…これが実に面白くて。王道、定番、捻り無き予定調和、変わらぬ古き良き心地良さ。水戸黄門やサザエさんに通じる魅力を本作から感じました。古さは時を経て古典へと昇華、令和の今では逆に新鮮とさえ思えるほど。同社は20年先を見据えて古典的RPGを作っていた、とは言い過ぎですけど、本作が丁寧な作りで高い完成度を誇る古典的王道RPGなのは確か。
RPGが好きな方には間違いなく絶賛オススメの本作。PC-FXユーザーなら必須、本体未所持なら本作を機会に買ってみるのも有り!?少々盛りすぎたけど、何はともあれミラークルム、そしてレイ・フォースに天晴れ!あとはスタオデシリーズ最新作『スタートリングオデッセイ3 ミレニアムの聖戦』を期待しながら待とう…もう20年くらい待ってますから。レイ・フォースの坂田文彦さん、スタオデ3を是非よろしくお願いします。