ファミコンで楽しめるクリスタルソフトのRPG
80年代にクリスタルソフトが制作したパソコン用本格RPGの数々は、今なお名作として評されています。リザード、ファンタジアン、そして夢幻の心臓…それらはパソコンでしか体験出来ない羨望のタイトルであり、多くの人が憧れを抱いた事でしょう。「RPGの名門」と言われる同社が、ファミコン・ディスクシステム用に制作したARPGが本作、カリーンの剣。RPGファンとして、これは期待せずにはいられません。
名門的堅実性と家庭用らしいゲーム性が好印象
クリスタルソフト制作のRPGは、練られたシステムや難易度の高さで本格的ながら敷居が高い部分も。本作では、同社製RPGらしい生真面目かつ堅実的ゲーム性を、遊び易いARPGに仕上げてます。当時ではメジャーなハイドライドやゼルダに習う、画面切り換え式の2Dトップビューマップに、街や城、ダンジョン等が点在。マップを歩く敵シンボルに触れると戦闘画面へ。戦闘はマップ同様2Dトップビューで展開され、敵シンボルとの接触地点に応じて戦闘地形も変化。主人公キャラを敵へ体当たりさせる事で攻撃、木や山など地形を利用したり、飛び道具、魔法のアイテムを活用する戦略性も豊かで、リアルタイムアクションのスリリングな戦いが楽しめます。
探索や謎解きは解りやすく、進行はサクサクと軽快に。謎解きのヒントが少々淡泊に感じますが、深く悩ませる事は無さそう。ゲーム後半で簡単な算数の問題が出されたのは、意表を突かれて印象に残ってます。王道の冒険譚を綴る物語が親しみ易く、しかし最後の展開にはちょっと驚き。蛇足ながら同社の『アスピック』も結末が凄くて。小学生時代に体験したあのラストはトラウマ級。
戦いは逃げられず、勝つ以外に未来は無し
地形やアイテムを上手く使い、半キャラずらしで1体ずつ刃を交え撃破…敵に突撃しパシパシ攻撃を当てる気持ち良さ、死と隣り合わせの緊張感張りつめる戦闘は本作最大の魅力。相応に手応えが有る戦闘は楽しくも、その実シビアです。マップ上で敵シンボルに触れると戦闘に切り替わり、敵は最大8体まで出現。敵数は戦闘に切り替わるまで解らず、さらに戦闘からの離脱も出来ません。敵に背を向けるのは勇者の恥…勝たなければ戦闘は終わらない、それが本作の戦です。
逃げる事は許されない本作の戦には、勝利の絶対的掟が有ります。敵との対峙「交戦は必ず1対1」で!サシの勝負が大原則。敵は主人公へと迫ってくるので、集団の場合は上手く散らして1体ずつ仕留めていく。必ず1対1。と言うのも、プレイヤーは敵から攻撃を受けてる間が半硬直状態になり、回避や攻撃、アイテム使用が著しく困難になります。敵2体との同時交戦は極めて分が悪く、複数の敵に包囲されると容赦なく袋叩きにされ瞬殺。囲まれた場合の突破が非常に困難かつ、袋叩きが始まると成す術無く即ゲームオーバー&セーブ地点からやり直し…何度この屈辱を味わった事か。もう一度繰り返しますが、戦は必ず1対1で。
RPG好きならディスクシステムを買ってでも有り!?
ゲームの要点をしっかり押さえ、シンプルに小さくまとめつつもボリューム不足は感じない、そんな手堅い印象の本作。ゲーム中のマメなセーブを快適化するクイックセーブは好印象、反面アイテム選択メニューは少々煩雑。雰囲気を盛り上げるオープニングやエンディングのヴィジュアル、各楽曲も良い出来で、特に「レンの世界」の曲は名曲として知られています。せっかくのディスクシステムなので、音色をもうちょっと頑張ってくれたら良かったなと。優良作は言い過ぎですが、普通に良作と言えます。昭和から令和を経て、今なお移植もリメイクも無い孤高のARPG…体験しないのはちょっと勿体ない、そんな一作です。
- メーカー:発売DOG(開発クリスタルソフト)
- 発売日:1987年10月2日
- メディア:ディスク
- 雑誌評価:16.64/25.00(ファミマガ) 25/40(ファミ通)